読者から考える——誰に向けたサイトにするか
読者から考える——誰に向けたサイトにするか
サイトづくりでは、「何について書くか」から入りがちです。テーマから考えるのは自然な道筋に見えますが、雑誌の世界には、もうひとつの入り口があります。
「誰に読んでもらうか」から考える、という入り口です。雑誌づくりでは、読者を先に決めてから誌面を組む考え方がよく使われます。
ライフスタイルブログでは、暮らしの記録を書きながら、よく響く読者像が見えてくることも多いです。特化型では、テーマとあわせて読者を先にイメージしておくと、記事と広告の方向が定まりやすくなります。
ここでは、雑誌が読者をどれほど細かく決めているかを見たうえで、「読者を決める」とは何をどこまで考えることなのかを説明します。
雑誌は、読者の年代と性別で分かれている
雑誌の業界には、日本雑誌協会という団体があります。この団体が部数の公表などに使っている雑誌の区分を見ると、おもしろいことがわかります。
男性向けの雑誌は「男性ヤング誌」「男性ヤングアダルト誌」「男性ミドルエイジ誌」「男性シニア誌」と、読者の年代で4段階に分かれています。
女性向けはさらに細かく、「女性ティーンズ誌」「女性ヤング誌」「女性ヤングアダルト誌」「女性ミドルエイジ誌」「女性シニア誌」「ミセス誌」の6段階です。
もちろん、釣り誌、ゴルフ誌、料理・グルメ誌のように、テーマで分ける区分もあります。それでも、ファッションや暮らしを扱う雑誌の中心的な区分は、読者の性別と年代で刻まれています。
「20代の男性向け」「50代の女性向け」という読者の決め方が、業界の分類にそのまま使われるほど当たり前のものだ、ということです。雑誌とはそもそも、読者を決めてから作る商品なのだということが、分類そのものに表れています。
同じ読者を、年代ごとに乗り換えさせる
この読者の刻み方が、いちばんはっきり見えるのが女性ファッション誌です。
宝島社の雑誌を年代順に並べると、20代向けの『sweet』の系統に始まり、30〜40代の『リンネル』、40代の『GLOW』、50〜60代の『大人のおしゃれ手帖』、そして60代の『素敵なあの人』へと続きます。
集英社にも、『Seventeen』から『non-no』『MORE』『BAILA』『Marisol』、そして50代前後の『éclat』へと続く階段があります。
一誌ずつ見れば別々の雑誌ですが、並べてみると、はしごのようにつながっています。読者が年齢を重ねたら、ひとつ上の段の雑誌に乗り換えてもらう。出版社は、ひとつの雑誌で全部の年代を追いかけるのではなく、年代ごとに別の雑誌を用意して、同じ読者と長く付き合う形を作っているわけです。
ここから読み取りたいのは、「読者を決める」ことの徹底ぶりです。同じ「女性向けのファッション」でも、25歳と45歳では、着たい服も、使える金額も、悩みも違います。だから雑誌は、10年ほどの幅で読者を区切り、その幅から外れた読者は、隣の雑誌に任せます。
ひとつの雑誌が「女性みんな」に向けて作られることは、まずありません。何十年も読者に選ばれ続けてきた雑誌の世界が、読者はここまで絞るものだと教えてくれています。
「読者を決める」とは、何を考えることか
では、個人のサイトで「読者を決める」とは、何をどこまで考えることなのでしょうか。
年齢と性別を決めれば終わり、ではありません。「30代女性向け」とメモに書いただけでは、記事は1本も書けるようになりません。読者を決めるというのは、その人がいま何に困っていて、何を知りたくて、どんな言葉なら受け取れるのかまでイメージすることです。
キャンプのサイトを例にします。「これからキャンプを始めたい、小さな子どものいる30代の親」に向けるなら、書く記事は「初心者のテント選び」「子連れで行きやすいキャンプ場」になり、紹介する道具は、値段が手頃で失敗しにくい定番品が中心になります。
一方、「道具にこだわりたいベテラン」に向けるなら、同じキャンプがテーマでも、記事の一覧も、紹介する道具も、まったく別のものになります。
テーマが同じでも、読者が変われば、書く記事が変わり、言葉づかいが変わり、載せる広告が変わる。つまり読者を意識することは、サイトの中身の方向を決めることでもあるのです。ライフスタイルブログでは、暮らしの記録を書きながら、このイメージが少しずつはっきりしてくることも多いです。
雑誌が年代ではしごを分けているのは、この違いを知っているからです。読者の年代がひとつ違えば、知りたいことも買うものも変わってしまう。だから雑誌を分ける。個人のサイトも、この細かさを見習って、「誰に向けるか」をはしごの一段分くらいの狭さで考えていきます。
読者は、会いに行って確かめるもの
もうひとつ、雑誌の編集長から学べることがあります。読者は、机の上で決めて終わりではない、ということです。
女性ファッション誌『JJ』の編集長を務めた今泉祐二さんは、読者のターゲットを25歳前後から大学生へと設定し直したとき、国内外で700人近くのスナップ写真を撮り、いま彼女たちが何を知りたいのかをリサーチしながら誌面を作り直したそうです。昔なら「この服を着ればおしゃれに見える」という切り口が成り立ったけれど、いまの世代はそうではない。「リアルなことじゃないと読者にはもう響かない」と語っています。
読者を「大学生」と決めて終わりにせず、700人に会いに行ったところに、この話の値打ちがあります。想像だけで固めた読者像は、実際の読者と少しずつずれていきます。ずれたまま作った誌面は、読まれません。だから編集長は、決めた読者に実際に会って、何を知りたがっているのかを確かめたわけです。
個人のサイトで700人に会う必要はありませんが、同じことは小さくできます。読者にあたる人がSNSに書き込んでいることを読む。動画や記事のコメント欄で、どんな質問が繰り返されているかを見る。身近にいる「まさにその読者」という一人に、何に困っているかを聞いてみる。
読者像は、頭の中だけで作るものではなく、実際の声にあたって確かめ、直していくものです。机の上で決めた読者と、確かめて直した読者とでは、そこから生まれる記事の的中率が違ってきます。
読者が見えてくると、広告主も見えてくる
最後に、収入の話です。読者を考えることは、読み物の方向だけを考える作業ではありません。
雑誌の誌面に載る広告は、その雑誌の読者が買いそうな商品の広告です。20代向けのファッション誌と60代向けの雑誌とでは、載っている広告の種類がまるで違います。広告主は、自分の商品を買ってくれそうな人が読んでいる雑誌を選んで、広告費を払うからです。
編集部が読者を決めた時点で、その雑誌に広告を出す会社の種類も、おおよそ決まっています。読者を決めることは、広告主を決めることでもあるのです。
アフィリエイトサイトも同じです。「これからキャンプを始めたい30代の親」に向けたサイトなら、案内できる広告は初心者向けの道具の通販やレンタルのサービスが中心になるでしょうし、読者をベテランに変えれば、その種類も変わります。
誰に向けたサイトかを意識することは、どんな広告主から収入を得るサイトになるかを見通すことでもあります。だから、読者を考えるときは、ASPの案件一覧も横に開いて、「この読者に案内できる広告はあるか」を行き来しながら考えていきます。読者だけを先に固めてしまうのではなく、広告と見比べながら少しずつ形にしていくやり方です。
雑誌の編集長は、顔の見える読者を決めて、その人がいま知りたいことを確かめながら誌面を作ります。サイトの読者を考えるときも、考え方は同じです。
年齢や性別のラベルで終わらせず、その人が何に困っていて、何を知りたいのかまで踏み込む。イメージしたら、実際の声にあたって確かめる。
「誰に読んでほしいサイトか」を、「これからキャンプを始めたい、小さな子どものいる30代の親」くらいの細かさで言えるようになれば、読者から考える作業は、ひとまず形になっています。ライフスタイルブログでは、その細かさは、書きながら少しずつ近づいていくもので構いません。