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広告から考える

広告から考える

雑誌社には、広告営業という部署があります。広告を出してくれそうな会社を訪ねて、「うちの雑誌の読者は、御社の商品を買ってくれそうな人たちです」と売り込み、出稿の契約をとってくる仕事です。雑誌の経営は販売収入よりも広告収入が支えていると言われますから、広告営業は、誌面を作る編集部と並ぶ、雑誌社の柱です。

個人でアフィリエイトサイトを作る場合、当然ながら営業部はありません。その代わりになるのが、ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)の案件一覧です。

ASPは、広告を出したい会社と、サイトに広告を載せたい個人とを仲介する事業者で、国内最大手のA8.netには、幅広い分野の会社の案件が集まっています。登録は無料で、管理画面を開けば、どんな会社が、どんな条件で、いくらの報酬を出しているかを見ることができます。

ここでは、その案件一覧の見方を説明します。早い段階で見ておくと、あとで収益化の道筋が見えやすくなります。ライフスタイルブログでも特化型でも同じです。

(今回の記事で出てくる件数や報酬額などは、執筆時点での数値です。現時点での数値と異なることを、あらかじめご了承ください。)

案件一覧は、広告を出したい会社の名簿

A8.netの案件一覧は、カテゴリに分かれていて、案件の多い分野を眺めるだけでも、どんな会社が広告費を出しているのかが見えてきます。就職・転職、不用品の買取などをあつかうリサイクル、スキンケア、習い事、インテリアペット、家電などなど。化粧品から引越しまで、生活のほとんどの場面に広告主がいることがわかります。

そして案件のひとつひとつには、広告主の名前と、報酬の金額と、「読者が何をしたら報酬が発生するか」という成果の条件が書かれています。

報酬には、発生の条件がある

実際の案件を3つ見てみましょう。

ひとつめは、食材宅配のOisix(オイシックス)です。「おためしセットの購入」で1,000円の報酬が発生します。読者があなたの記事の広告から公式サイトへ進み、おためしセットを買うと、報酬になる。条件は「購入」、つまり読者がお金を払う行動です。

ふたつめは、引越しの一括見積もりサービス「引越し侍」。「新規の一括見積もりの完了」で1,600円です。読者は見積もりを頼んだだけで、まだ1円も払っていません。それでも報酬が発生します。

みっつめは、動画配信サービスです。dアニメストアは新規の会員登録で625円、ABEMAプレミアムは902円、スカパー!は新規の有料契約で3,620円。「登録」や「契約」が条件になっています。

このように、成果の条件には、購入のほかに、登録、資料請求、見積もり、査定、体験の申し込みなど、いくつもの種類があります。

大きな分かれ目は、読者がお金を払う条件か、払わない条件かです。見積もりや資料請求のように、読者がお金を払わない行動で報酬が発生する案件を、ここでは「無料案件」と呼びます。読者にとって頼みやすい行動ほど、成果までの距離は近くなります。

どんな条件の案件が多いかは、ジャンルによってはっきり傾向が分かれます。

無料の行動で報酬が出るジャンル——転職・婚活・学び

無料案件がとくに多いのは、仕事・転職、恋愛・婚活、学び・教育の3つの分野です。手元の集計では、仕事・転職の391件のうち77%、恋愛・婚活の78件のうち73%、学び・教育の437件のうち54%が、無料案件でした。転職サービスへの会員登録、結婚相談所の資料請求、通信講座の資料請求。読者がお金を払わなくても、報酬が発生します。

なぜ広告主は、無料の行動にお金を払えるのでしょうか。これらのビジネスに共通するのは、1人の顧客があとから大きな金額を払うことです。転職サービスは、登録した人の転職が決まると、採用した企業から紹介料を受け取ります。結婚相談所は、入会した人から会費を受け取り続けます。通信講座は、資料請求した人の何人かが受講を申し込みます。1人の顧客がその会社に払う金額の合計を、LTV(ライフタイムバリュー・顧客生涯価値)と呼びます。LTVの大きいビジネスは、入口の無料の行動にも広告費を出せるのです。

報酬の水準も高めで、仕事・転職の報酬の中央値は6,000円、恋愛・婚活の上位10%は25,000円でした。エンジニア向けの転職サービスには、面談への参加で7万円を超える案件もあります。

売上の数%が報酬になるジャンル——ファッション・グルメ

反対に、ファッションとグルメ・食品では、「売上の◯%」という定率型の案件が主流です。手元の集計では、ファッションの300件のうち88%、グルメ・食品の278件のうち55%が定率型でした。服が1着売れたら売上の数%、お取り寄せの食品が売れたら数%、という形です。

1件あたりの報酬は小さくなりますが、成果の条件は「購入」そのもので、読者が買い物をすれば、それがそのまま成果になります。登録や契約のような手続きを挟まないぶん、成果のわかりやすい世界です。紹介する商品の数を増やし、読んでくれる読者の数を増やして、小さな報酬を積み上げていくジャンルだと言えます。

1件あたりの報酬が高いジャンル——通信・ネット

1件あたりの報酬がもっとも高いのは、通信・ネットの分野です。インターネット回線やレンタルサーバーなどの182件で、報酬の中央値は10,000円。上位10%は43,000円に達します。

高い理由も、LTVで説明がつきます。回線もサーバーも、契約した顧客が毎月、料金を払い続けるサービスです。1件の契約の価値が大きいから、広告主は1件に高い報酬を出せます。

ただし、この分野で無料案件はわずか1%で、報酬のほとんどは、読者が実際に契約してはじめて発生します。報酬が高いことと、成果までの距離が近いことは、別の話なのです。

承認率——発生した報酬が、支払われる割合

一覧を見るとき、報酬の金額と並んで見ておきたい数字が、もうひとつあります。承認率です。

アフィリエイトの報酬は、発生した時点ではまだ確定していません。広告主が内容を確認し、承認したものだけが支払われます。いたずらの申し込みや重複、キャンセルなどは却下されます。

発生した成果のうち承認された割合が承認率で、A8.netの一覧には、案件ごとにこの数字が公開されているものがあります。

承認率にも、ジャンルごとの傾向がはっきりあります。手元の集計では、エンタメ・趣味とファッションの承認率の中央値は97%。買い物がそのまま成果になる分野では、発生した報酬はほぼ支払われます。

一方、金融・投資・保険は57%、仕事・転職は58%、恋愛・婚活は46%。発生した報酬の半分近くが却下される計算です。

これは、高い報酬を出す広告主が、支払う成果を厳しく確かめている、という仕組みの表れです。結婚相談所にとって、資料請求だけして連絡のつかない人と、真剣に入会を考えている人とでは、顧客としての価値がまったく違います。だから広告主は、条件を満たした成果だけを選んで承認します。報酬の高いジャンルほど承認率が低くなる傾向は、こうして生まれます。

見かけの報酬額だけで判断しないことが大切です。報酬10,000円で承認率50%の案件と、報酬5,000円で承認率95%の案件は、期待できる金額がほぼ同じになります。金額と承認率は、セットで読むようにしましょう。

一覧で確かめる3つの点

この回で見た条件・報酬・承認率を、自分のテーマに当てはめるときの手順です。

A8.netに登録し(無料です)、テーマに近い言葉で案件を検索して、次の3点をメモしてみましょう。

  1. 案件がいくつあるか
  2. 成果の条件は、購入なのか、無料の行動なのか
  3. 報酬の金額と承認率はどれくらいか

案件が多ければ、そのテーマには広告費を出してでも顧客を集めたい会社が厚い、と読めます。少なければ、収益の道筋に工夫がいる、と早めにわかります。どちらの結果でも、一覧を開いて判断したあとの方が、見当をつけずに書き進めるより具体的です。ライフスタイルブログでは、書きながら柱が見えてきたタイミングで同じ確認をしても構いません。