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特集、別冊、そして独立創刊——号を重ねて、特化サイトに育てる

特集、別冊、そして独立創刊——号を重ねて、特化サイトに育てる

ひとつのテーマで作り切ったものが、読まれている。同じテーマで、まだ書けることがある。そう感じたら、次の段階です。

雑誌の世界には、扱う範囲を広げるときの決まった段取りがあります。特集で試し、別冊にして、手応えがあれば独立した雑誌として創刊する。3段階です。ひとつのテーマで作り切ったものは、この真ん中の「別冊」にあたります。ここでは、その先を見ていきます。

記事群を重ねると、サイトになる

まず、書き足していく側の話からです。

記事群というまとまりを思い出してみます。システム手帳なら、全体をまとめる1本と、5冊の個別レビュー、それに「A5とバイブルはどちらがよいか」「リング径で何が変わるか」といった深掘りの記事。合わせて11本ほどになります。

このうち深掘りの1本が、そのまま次の記事群の入り口になります。サイズの話だけで、A5を選ぶ人、バイブルを選ぶ人、持ち歩き方、机での使い方と、また10本前後の記事群がひとつできます。リフィルの話でも、同じことができます。

こうして記事群を重ねていくと、30本から50本の規模になります。ひとつのテーマについて、これだけの記事がそろっているサイトは、もう特化サイトです。暮らしの記録の中の一区画だったものが、独立して立つ大きさになっています。

雑誌は、いきなり創刊しない

広げる順番のほうを見ておきます。

新しい分野に手を広げるとき、出版社がいきなり雑誌を創刊することは、まずありません。創刊には費用も人手もかかり、外れたときの痛手が大きいからです。代わりに、段階を踏みます。

第一段階は、本誌の中の特集として試すことです。いつもの誌面の一部を使って、新しいテーマの特集を組む。売れ行きと読者の反応を見れば、需要があるかどうかの手応えがつかめます。かかるのは1号分の誌面だけで、外れてもその号かぎりです。

すでに読者がついている本誌の中で試せることにも意味があります。まっさらな新雑誌を書店に置いても手に取ってもらえるかはわかりませんが、本誌の特集なら、確実に読者の目に触れたうえでの反応が返ってきます。

第二段階が、別冊です。反応がよければ、そのテーマだけで1冊を作ります。本誌とは別の一冊として並びますが、表紙には本誌の名前が残ります。本誌が積み上げてきた読者と信用を土台にして、1冊分の厚さで試すわけです。

第三段階が、独立した雑誌としての創刊です。別冊が繰り返し売れるなら、そのテーマは1冊かぎりの企画ではなく、出し続けられる分野だとわかります。そこまで確かめて、はじめて踏み切ります。

商品を自分たちで買ってテストする雑誌『LDK』は、この道をたどりました。美容を扱う『LDK the Beauty』は、2017年に『LDK』の特別編集として生まれ、はじめは偶数月の発売でしたが、2018年に月刊になりました。「自分たちで買ってテストする」という本誌の看板はそのままに、美容というひとつの分野が、別冊から一人前の月刊誌に育っています。

別冊のまま育てる道もあります。福岡には『シティ情報Fukuoka』という1976年創刊のタウン誌があり、街の情報を幅広く扱う本誌とは別に、ラーメンだけを扱う『福岡麺本』を出しています。これが1冊かぎりで終わらず、号を重ねています。3段階は、最後まで登らなければいけない階段ではありません。別冊の段にとどまって育てるのも、ひとつの形です。

サイトに置き換えて考える

この3段階の考え方は、そのままサイトにも使えます。

第一段階は、いまのサイトの中で記事群をひとつ作って試すことです。暮らしの記録の中に、そのテーマの記事群を作ってみる。アクセスや検索での順位、読者の反応を見れば、需要があるか、自分が書き続けられそうかがわかってきます。外れても、失うのは記事数本分の手間です。

第二段階が、作り切ることです。読まれているとわかったテーマで、30ページから50ページのまとまりをひとつ作る。サイトの中に専用のカテゴリを作って入り口のページを整えてもよいですし、独立性が高いなら、別のサイトとして作り切ってもかまいません。どちらも、雑誌でいえば別冊にあたります。

第三段階が、独立です。そのテーマだけを目当てに来る読者が増え、まだ書けることがあるとわかったら、独立したサイトとして立ち上げます。サイトの名前も説明文もそのテーマに合わせられますし、広告も、そのテーマの読者に合わせて組み直せます。もちろん、『福岡麺本』のように、切り出したものを定番として育て続けるだけでも、十分に立派な広げ方です。

幹が細いうちに、枝を広げない

この3段階でいちばん大切なのは、順番です。木にたとえると、覚えやすくなります。

サイトの軸になっているテーマが、幹です。そこから広げる新しい分野が、枝です。木は、幹が太くなってはじめて、枝を大きく広げられます。細い苗木のうちに枝ばかり伸ばせば、重みで折れます。

サイトでも同じです。軸のテーマが育たないうちに範囲を広げると、労力が分かれて、どのテーマも中途半端になります。読者から見ても、何に詳しいサイトなのかがわからなくなります。新しいサイトをいきなり増やす場合も同じで、幹のないところに2本目の苗木を植えれば、細い木が2本並ぶだけです。

『LDK the Beauty』が独立した雑誌にまで育ったのも、「自分たちで買ってテストする」という幹への信用が先にあったからです。『福岡麺本』も、街の情報を50年近く扱ってきた本誌があるから、そのラーメン版として迎えられます。

だからこそ、幹には長く付き合えるテーマを選んでおくことが効いてきます。一時の流行だけで成り立っているテーマを幹にすると、枝を伸ばせるほど太くなる前に、幹そのものが枯れてしまいかねません。枝は流行りものでもかまいませんが、幹は、時間をかけて太らせる前提で選ぶものです。

幹が太くなったかどうかは、次のあたりが目安になります。軸のテーマで、検索から安定して読まれる記事が積み上がっているか。そのテーマの中心的な話題を、ひととおり書き終えているか。まだであれば、枝を考えるより、幹の記事を足すほうが早道です。

創刊しても、号は続く

独立したサイトを立ち上げることは、雑誌でいえば創刊です。ただ、創刊はゴールではありません。雑誌は創刊号を出したあとも、毎月、毎週、次の号を作り続けます。読者の反応を見て特集を変え、誌面を作り替えながら、関係を太くしていきます。『シティ情報Fukuoka』も、1976年から号を重ねて、いまの姿になりました。

サイトも同じです。記事を足し、古い記事を直し、次に立てる記事群を決めていく。1年ぶんの企画を並べた年間の企画表は、独立したあとも同じように使えます。むしろ、テーマが1つに定まったぶん、マスは埋めやすくなっているはずです。

暮らしの記録から始めて、柱を見つけ、抜き出して1つ作り切り、号を重ねて独立させる。雑誌が扱う範囲を広げてきたのと、同じ順番です。育った枝は、また次の幹になります。