記事は、まとまりで
記事は、まとまりで
書くことが見えてきたら、記事を書き始めることになります。1本目は、書けます。書き上げて、次は何を書こうかと考える。2本目もどうにか書く。3本目のあたりで、手が止まる。思いつきで1本ずつ足していく書き方は、たいていここで行き詰まります。
雑誌は、この作り方をしていません。1本ずつ考えるのではなく、まとまりで決めてから作り始めます。ここでは、そのやり方をサイトに持ち込みます。
雑誌の特集は、まとまりで組まれる
ある雑誌の編集者が、特集ができるまでの手順を書いています。編集会議で決まるのは、「買い替え」「必携アプリ」といったざっくりしたテーマだけで、そこから担当の編集者が輪郭をはっきりさせていくそうです。ターゲットはどんな人か。どんなことを届けたいか。14ページや26ページといったページ数の中に、何を入れていくか。これが記事の骨組みにあたる部分で、ここが曖昧だと良い特集にはならない、と書かれています。
順番を見ておきます。テーマが決まる。誰に向けるかを決める。分量を決める。その枠の中に何を入れるかを組み立てる。それから、書き手や撮影の手配に入ります。1本作ってから次を考える、という進み方ではありません。
サイトでも、同じことができます。記事を1本ずつ考えるのをやめて、まとまりで決める。ここでは、このまとまりを記事群と呼びます。
大きさは、2時間おしゃべりできるかで測る
まとまりを作るとき、最初に決めるのは大きさです。
「キャンプについて教えてください」と言われても、答えようがありません。範囲が広すぎるからです。会話なら、こう聞き返すはずです。キャンプは初めてですか。何人で行きますか。「初めてのソロキャンプに必要な道具について教えてください」まで絞られれば、話せます。聞くほうも、何の話が始まるのかが分かります。
目安は、そのテーマについて、詳しい友達に2時間くらい教えてあげられるかどうかです。2時間分の話は、記事にすると10本前後になります。雑誌が14ページ、26ページと枠を決めてから中身を考えるのと、同じことをしています。
2時間と言われても見当がつかないときは、1本ずつに割って考えてみましょう。10本で2時間なら、1本あたり15分ほど。15分くらい話せる話題が10個あるかどうか、と考えれば、自分に何が話せるかを数えやすくなります。
もうひとつ、テーマと合わせて決めておきたいのが、どんな人に話すかです。同じテーマパークでも、子どもを連れて毎年通っている人なら、小さい子と回る順番や休憩の取り方は語れますが、カップル向けの過ごし方は語れません。行ったことのない立場のことは、話しようがないからです。テーマを絞るだけでは足りず、誰に向かって話すかが決まって、はじめて自分の語れる範囲が定まります。
全体像を先に見せてから、細部に入る
数ページ以上の特集には、扉が置かれます。扉とは、その特集だけの表紙のようなページです。そのあとにリードが続き、この特集で何を扱うのかが短くまとめられます。読者は、全体像を受け取ってから、個々の記事に入っていきます。
これは、人前で話すときの組み立てと同じです。「大事なのはこの8つです」と先に示してから、ひとつずつ詳しく話していく。聞いているほうは、いま全体のどこにいるのかが分かるので、迷いません。
サイトの記事群も、この形にします。全体をまとめる1本を入り口に置き、その下に、ひとつひとつを詳しく書いた記事を並べる。入り口の記事から詳しい記事へ、詳しい記事から関連する別の記事へと、リンクでつないでおきます。読者は、気になったところだけを深く読めますし、読み終えたあとに隣の記事へ移れます。
何を書くかは、読者のほうから洗い出す
記事群の中身を決めるとき、検索される言葉を集めて、そこから記事を割り振っていくやり方だけでは、抜けが出ます。先に考えるのは、読者のほうです。
手順は3段階になります。
まず、入り口の記事に来る人が何を知りたいのかを考えます。次に、その人が「これで全部わかった、あとはやるだけ」と言えるまでに、何を伝える必要があるかを書き出します。そして、書き出したひとつひとつを記事にします。並べる順は、読者が考える順です。
検索される言葉と突き合わせるのは、そのあとです。対応する言葉があれば、タイトルに入れます。対応する言葉がなくても、必要なことなら記事にします。検索の言葉は、実際に検索された言葉の記録であって、読者が知りたいことの全部ではありません。うまく言葉にできなくて検索できていない疑問もあれば、買ったあとになってはじめて困ることもあります。
実例——10年で5冊使ってきたなら、5冊の比較ができる
比較の記事群を例にします。比較というのは、選び方を並べて終わりではなく、「で、結局どれがいいのか」に答えるものです。そしてその答えは、これから調べて出すものとはかぎりません。長く使ってきた人なら、もう自分の中にあります。
システム手帳を10年使ってきて、その間に5冊買い替えてきた人がいるとします。この人は、5冊の比較ができます。
入り口に置くのは、5冊を並べて比べ、いまはこれに落ち着いた、と書くページです。その下に、1冊目から5冊目までの個別のレビューを5本。なぜそれを選んだか、使ってみてどうだったか、何が足りなくて次に買い替えたか。さらに、5冊を通して分かったことを、切り口ごとに5本。A5とバイブルはどちらを選ぶか。リングの太さで何が変わるか。革と合皮は10年でどう違ってくるか。最初の1冊にいくらかけるか。リフィルには何を入れるか。合わせて11本で、記事群ひとつ分になります。
切り口ごとの記事は、入り口のページに表として畳んでしまわず、独立させます。「A5とバイブル、どっちがいい?」は、それだけを知りたい人が検索します。表の一行にしてしまうと、その人には届きません。1本立てておけば、入り口がひとつ増えます。
この作り方なら、比べるために5冊をまとめて買う必要はありません。10年分の買い替えが、そのまま個別レビューの材料になっているからです。暮らしの中で自分が調べて決めてきたことは、こうやって記事群に組み直せます。
書く順番は、詳しい記事が先です。5冊のレビューを書いてから、入り口の比較ページを書く。比較は、1冊ずつの中身でできているからです。家を建てるのとは逆で、部屋から作って、玄関を最後に作ります。
体験記なら、時間の順がそのまま並び順になる
もうひとつの形が、体験記です。これから経験することを記録していく作りで、この場合は、時間の流れがそのまま記事の並びになります。
宅建試験への挑戦を記録するなら、記事の列はたとえばこうなります。挑戦を宣言する。教材を選ぶ。勉強の記録の序盤。中盤。どうしてもわからなかった箇所と、抜け出し方。直前期にやったこと。試験当日の記録。結果発表。これから受ける人へのまとめ。9本です。
挑戦はこれからで、結果もまだ出ていません。それでも、記事の列は先に書けます。試験勉強がどんな段階を踏んで進むかは、始める前から大筋が分かっているからです。体験が進めば次に書くことは決まっていくので、途中でネタを探す必要もありません。
「まず100記事」ではなく、10本のまとまりから
「ブログは最低100記事」という話を聞いたことがあるかもしれません。この数字を目の前にすると、始める前から気が遠くなります。ただ、あれは、書きながらテーマを探していくやり方の目安です。まとまりで作るなら、10本前後で、ひとつのテーマについて読者を満足させられます。
10本という数は、週に2本書けば1か月半、週1本でも3か月かからずに届きます。100本はゴールが見えませんが、10本なら並びが先に決まっているので、途中で何を書くか迷うこともありません。そして、10本書き終えたころには、そのテーマについて自分がかなり詳しくなっています。次のまとまりは、そのあとで立てれば足ります。
紙1枚に、書き出してみる
自分の記事群を、紙1枚かメモアプリの1画面に書き出してみましょう。
手順は3つです。まず、テーマと、誰に向けるかを決めます。「システム手帳を、これから1冊目を買う人に」のように、2つセットで書きます。次に、その人が「全部わかった」と言えるまでに必要なことを、思いつく順で書き出します。最後に、それをひとつずつ記事のタイトルにして、読者が考える順に並べ替えます。
タイトルは仮置きで十分です。並べ終えたら、数を見てみましょう。10本前後になっていれば、ちょうど2時間おしゃべりできる大きさです。5本にしかならないなら、テーマを絞りすぎているか、まだ調べ足りないかのどちらかです。20本を超えるようなら、範囲が広すぎるので、どこかで2つに割ります。
白紙に向かって1本目を書き始めるのと、10本の並びの1行目から書き始めるのとでは、書き出しやすさがまるで違います。並びが決まっていれば、1本書き終えた時点で、次に何を書くかはもう決まっているからです。