年間の企画表——鉄板の特集は毎年めぐってくる
年間の企画表——鉄板の特集は毎年めぐってくる
記事群をひとつ作り終えると、次の問いが来ます。次は、何を書くか。ここを毎回ゼロから考えていると、いつか思いつかない日が来ます。書くことが決まらないまま日が過ぎて、更新が止まる。サイトが育たなくなる原因の多くは、文章力でも時間でもなく、この「次が決まらない」状態です。
同じ悩みと、雑誌の編集部は何十年も前から付き合ってきました。月刊誌なら、年に12回、必ず特集を用意しなければなりません。それでも雑誌は毎号出続けています。どうやって企画を切らさずにいるのか。種明かしのひとつは、バックナンバーを1年分並べてみるとわかります。
バックナンバーを並べると見えてくること
商品を自分たちで買ってテストする雑誌『LDK』の、この1年の特集を順に見てみます。12月号は「\まじラク落ち!/大掃除術」。年が明けて1月号は「\見つけてよかった。/今年のベスト2025」。2月号は「損しないためのお金づくり」。そして11月号には「無印良品 \丸っと/大特集」が来ます。
料理と生活の雑誌『オレンジページ』は、夏になると「パーフェクト夏麺!」「夏野菜はシンプルがいい!」と夏の食材の特集を組み、春のお弁当シーズンには「朝作る派も、作りおき派も 神ラク弁当!」を出します。
マネー誌の『ダイヤモンドZAi』には、「春/夏/秋/新春の人気株500激辛診断」という年4回の定番があります。カルチャー誌の『BRUTUS』は、1月に「お金、はじめる。」。年のはじめは、お金の特集の季節です。
つまり、雑誌の特集には、毎年同じ時期に返ってくる定番があるのです。大掃除は12月、今年のベストは年末年始、お弁当は春、麺は夏。こうした毎年繰り返される企画を、ここでは「鉄板企画」と呼びます。
毎年同じ企画でよい理由
同じ企画の繰り返しは、手抜きに見えるかもしれません。実際は逆です。雑誌は売れ行きがはっきり数字に出るビジネスですから、売れない特集を毎年続ける理由がありません。毎年組まれているということは、毎年売れているということです。鉄板企画は、読者に求められ続けていることが実証済みの企画です。
読者の側から考えると、理由はもっと素朴です。大掃除の悩みは、毎年12月に戻ってきます。お弁当作りは、毎年春に始まります。悩みが毎年めぐってくるのだから、それに答える企画も毎年出してよいわけです。しかも、読者は入れ替わります。去年はじめてお弁当を作った人と、今年はじめて作る人は、別の人です。
雑誌は、この繰り返しを隠しません。むしろ年号を付けて堂々と更新します。『BRUTUS』の「居住空間学2026」、東京のおでかけ誌『OZmagazine』の「横浜の歩き方2026」「ごきげん鎌倉さんぽ2026」。年号付きの特集は、これは毎年更新する定番です、という宣言でもあります。
サイトでは、この更新がもっと楽にできます。雑誌と違って、ウェブの記事は刷り直しがきくからです。去年書いた「買ってよかったもの」の記事を、今年の内容に書き直して年号を付け替える。ゼロから書くより早く仕上がりますし、記事は年を重ねるごとに厚くなっていきます。
自分のテーマに翻訳して、年間の企画表を作る
鉄板企画を月別に並べると、1年のカレンダーになります。実際の特集で埋めると、たとえばこうなります。
| 時期 | 実際の特集(誌名) |
|---|---|
| 1月 | 「お金、はじめる。」(BRUTUS)/「2026年株全予測&儲け方」(ダイヤモンドZAi) |
| 2〜3月 | 「損しないためのお金づくり」「10年後に後悔しないための/老けない食べ活」(LDK) |
| 3〜4月 | 「朝作る派も、作りおき派も 神ラク弁当!」(オレンジページ)/「2026年春は『はおりもの』からやってくる!」(LEE) |
| 5〜6月 | 「夏のワードローブ大正解5着」(LEE) |
| 7〜8月 | 「パーフェクト夏麺!」(オレンジページ)/「しんどい夏を乗り切る 疲れない!ごはん作り」(LDK)/「富士山 登る派?眺める派?」(BE-PAL) |
| 9〜10月 | 「秋はやっぱり日帰りハイク&グルメでしょ!」(BE-PAL)/「残暑の9月は『新鮮コスパ服』でおしゃれ再始動!!」(LEE) |
| 11月 | 「秋の暮らしが豊かになる」手帳付き特別号(サンキュ!)/「無印良品 \丸っと/大特集」(LDK) |
| 12月 | 「\まじラク落ち!/大掃除術」(LDK)/「\見つけてよかった。/今年のベスト2025」(LDK・1月号) |
この表を、自分のサイトのテーマに翻訳します。たとえばキャンプのサイトなら、「パーフェクト夏麺!」の位置には「電車で行ける避暑キャンプ場」が入り、「\まじラク落ち!/大掃除術」の位置には「年末にやる道具の手入れ」、「今年のベスト2025」の位置には「私が今年買ってよかったキャンプ道具」が入ります。
雑誌の特集をそのまま写すのではありません。同じ時期に自分の読者が何を探し始めるかを考えて、マスを埋めていきます。
埋めたマスのひとつひとつが、次に立てる記事群の候補です。「電車で行ける避暑キャンプ場」なら、全体をまとめる1本と、1か所ずつのキャンプ場の記事、行き方や持ち物の記事が下にぶら下がります。マスを見て、いまの季節に間に合うものから記事群にしていけば、次に何を書くかで止まりません。
年間の企画表があると、まず、ネタ切れに追われなくなります。次に何を書くかを毎回ゼロから考える代わりに、表を見て選べばよいからです。
もうひとつの利点は、先回りができることです。季節の話題は、その季節が来てから検索され始めます。読者が探し始めたときに記事が間に合っているように、ひとつ前の季節のうちに書いておく。夏のキャンプ場の記事は春に、道具の手入れの記事は秋に。季節が来たときには公開済みで、読者を待っている状態が作れます。
記事群は10本前後になりますから、この仕込みの時間は、思っているより早めに取っておくほうが間に合います。
タイトルには、数字・期間・固有名詞を入れる
企画表のマスを埋めるとき、企画のタイトルの付け方にも、雑誌から学べる技術があります。特集タイトルを数多く並べて見ていくと、繰り返し使われている道具が3つ見つかります。
1つ目は、数字です。登山の専門誌『山と溪谷』の「厳選!全国絶景低山100」「全国2時間登頂の山50」、アウトドア誌『BE-PAL』の「みんなのソロ活80選」、『LEE』の「夏のワードローブ大正解5着」。数字は、その企画の規模とゴールを一瞬で伝えます。100本あれば自分に合う山が見つかりそうだと思えますし、5着なら最後まで読めそうだと思えます。
2つ目は、期間です。体づくりの雑誌『Tarzan』の「週に10分で、あの日のカラダに帰るストレッチ習慣。」「たった2週間でガラリと腸内環境を変えられる、腸活最前線。」。かかる時間が先に示されていると、読者は、自分にもできそうかどうかをタイトルだけで判断できます。
3つ目は、固有名詞です。『LDK』の「無印良品 \丸っと/大特集」「コストコVS大容量スーパー おトク度決定戦」。店やブランドの名前は、それ自体が検索される言葉です。固有名詞の入ったタイトルは、その名前で探している読者にまっすぐ届きます。
ひとつ注意があります。雑誌の表紙のコピーには、「最強」「大正解」のような強い断定も目立ちます。書店で一瞬で手に取ってもらうための言葉なので、そのままサイトの記事タイトルに移すと、大げさになりがちです。持ち帰るのは、数字・期間・固有名詞という、情報を正確に増やす技術だけで十分です。
数字を入れると、企画になる
3つの中でも、数字には特別な働きがあります。思いつきを企画に変える働きです。
「駅から歩けるキャンプ場を紹介したい」は、まだ思いつきです。調べる範囲も、記事の本数も、終わりも決まっていません。
これを「駅から歩けるキャンプ場20」にすると、調べる対象が20か所に定まり、記事の完成形が見え、どこまでやれば終わりかが決まります。読者にとっても、20か所を調べて選んだことが伝わるタイトルになります。
年間の企画表のマスに書き込むときも、「夏のキャンプ場の話」ではなく「電車で行ける避暑キャンプ場10」のように、数字まで入れて書いておくとよいでしょう。数字が入った企画は、書き始めるときに迷いません。
年間の企画表は、30分もあれば最初の形が作れます。自分のテーマに近い雑誌を1〜2誌選び、出版社の号一覧やバックナンバーのページで、特集タイトルを1年分書き写してみましょう。現物を買わなくても、タイトルだけで学べます。
書き写したら、12か月の表のとなりに自分のテーマの列を作り、翻訳できるものから埋めていきます。全部のマスが埋まらなくてもかまいません。半分埋まれば、半年分の企画がもう手元にあることになります。
鉄板の特集が毎年めぐってくるように、一度表にした企画は、来年もまた使えます。